■建物を設計すると言うこと

 世間一般では、設計=間取りや外観を考え、設計図を書くことととらえられているようです。
 しかし、建築は、一定水準の建築技術に対する知識が有れば出来るものではありません。専門的な建築技術に対する知識を持った上で、思考する力、創造する力、表現する力、そしてこれらをまとめる力が無ければ優れた建築は出来ないのです。そしてこれらを総合して行われる作業を「建築をデザインする」と言います。即ち、「建物を設計する」と言うことは、「建築をデザインする」と言うことなのです。

 
■建築をデザインすると言うこと
 では、「建築をデザインする」とは、専門的な建築技術に対する知識を持った上で、思考する力、創造する力、表現する力、そしてこれらをまとめる力があれば、それで良いのでしょうか。
 一般にデザインについて語るときに、「人間工学に基づいた」とか「使いやすさ」と言う言葉を使います。これは建築でも同じことで、住宅でも店舗でも事務所でも、そこには「使う人」が存在します。家に住む人、お店に来る人、事務所で働く人。皆さんが快適に時間を過ごすことが出来なければ、それはデザインされた建築とは言えません。そう言う意味では、建築設計は他とは違うデザインではなく、デザインというカテゴリーの中の一分野なのです。唯一他と違うのは、他のデザインは「そのもの」をデザインするのに対して、建築は「そのものとその場、空間」をデザインすると言うことです。
 「クライアントの立場に立って思考、創造、表現する」、「クライアントの思いを理解し、自身の中で昇華してクライアントに返すことができる」力を持つこと、100を100以上にしてクライアントに返すことが、「建築をデザインする」と言うことなのです。
 
■建築デザインの果たす役割〜建築デザイナーの責任
 私達が「街」を表現するときに、建築は「街」のイメージを左右する上での重要なアイテムです。「綺麗な街」、「落ち着いた雰囲気の街」、「風情のある路地裏」等は、何れも建物が主になってもたらされるイメージです。建築は不特定多数の目に触れるもの、自らそれを否定できない(目をつぶって街は歩けない)ものです。それだけに、街にとって建築の果たす役割は大きいと言え、それを生み出す建築デザインの持つ責任は大きいと言えます。そして、これに関わる者は、それだけ大きな責任を負っているのです。
 「建築」は外部空間と一体になってデザインされその存在意味を持ちます。そして、建築の集合は「街」を形成します。そのことだけを考えても、関わる者の責任の大きさは明確です。
 
■私は誰、私は何者
 私は、建築と言う世界にいる者として、これまでに述べてきたことをしっかりと認識し、日々向上心を忘れず、真摯に建築と向き合って行かねばならないと考えていますし、それを前提に活動しています。
 私は、「建築デザイナー」である以前に、「デザイナー」であろうと考えています。一カテゴリーの中の小さな分野でのみ活動することは、自ら視野を狭めてしまう。狭い視野では自由な発想は生まれない。大学や仕事の中で建築を学びながら、多くの建築家の先輩方と出会うことが出来ました。彼らを通じて学んだことが、「建築を知ることだけでは建築は語れない」と言うことでした。真の意味で建築を語るため、広い視野から建築を考えるためにも、私は「デザイナー」で有り続けたいと思っています。

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